高さ2m以上の墜落防止措置とは?安衛則519条の囲い・手すり・代替措置と罰則

高所での作業中に労働者が墜落・転落しないよう、事業者にはさまざまな安全措置が義務付けられています。

安衛則519条は、作業床の端や開口部からの墜落を防ぐための規定です。必要な措置や違反時の罰則、公表事案を紹介します。

高さ2メートル以上の作業床の端や開口部等には、原則として囲い・手すり・覆い等の設置が必要です。

設置が著しく困難な場合は、防網の展張や要求性能墜落制止用器具(いわゆる安全帯)の使用など、代替措置が求められます。

もくじ

安衛則519条が適用される場所・条件

労働安全衛生規則第519条は、高さが2メートル以上の作業床の端や開口部等で、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所に、囲い・手すり・覆い等(以下「囲い等」)を設けることを事業者に義務付けています。

「事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆い等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。」

※ 出典:厚生労働省「労働安全衛生規則」518〜521条

条文の要件は「高さ」であり、「深さ」は含まれません。屋根工事や鉄骨工事では、作業床の端に手すりがないケースなどで問題になります。

高さ2メートル未満であっても、安衛法上の他の危険防止義務や、作業方法・設備に応じた別の規定が適用される可能性があります。「高さ2メートル未満だから安全対策が不要」というわけではありません。

519条自体は、囲い・手すり・覆い等の具体的な寸法や構造までは定めていません。使用する設備によって確認すべき条文は異なります。

設備 確認先の条文
足場の作業床(幅・隙間・手すりわく等)安衛則第563条(作業床)
移動はしご安衛則第527条(移動はしご)
脚立安衛則第528条(脚立)

※ 出典:厚生労働省「労働安全衛生規則」(第527条・第528条)、同(第563条)

原則となる囲い・手すり・覆いと代替措置

519条が定める原則的な措置は、高さ2メートル以上の作業床の端や開口部等への囲い・手すり・覆い等の設置です。

囲い等の設置が著しく困難なとき、または作業の必要上臨時に取り外すときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等の措置を講じなければなりません(519条2項)。

「事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。」

2019年2月1日施行の法令改正により、「安全帯」の名称や範囲、性能要件が見直され、「墜落制止用器具」に改められました。

旧規格品の経過措置は2022年1月1日に終了しました。現在は原則として、新規格に適合した器具を使う必要があります。ただし、同等以上の性能について厚生労働省労働基準局長の認定を受けた適用除外品も使用できます。

現場で今も「安全帯」と呼んでいても、新規格に適合した製品か、適用除外の認定を受けた製品かを確認する必要があります。

※ 出典:厚生労働省「墜落制止用器具に係る質疑応答集」

518条・519条・520条・521条の違い

518条から521条までの役割を整理すると、次のようになります。

条文 原則的な措置(1項) 例外・代替措置・関連義務 義務を負う者
518条高さ2m以上の箇所(作業床の端・開口部等を除く)で作業する場合、足場等の作業床を設ける義務作業床の設置が困難なときは、防網の展張・要求性能墜落制止用器具の使用等の措置を講じる義務事業者
519条(開口部等の囲い等)高さ2m以上の作業床の端・開口部等に囲い・手すり・覆い等を設ける義務囲い等の設置が著しく困難なとき、または作業上臨時に取り外すときは、防網の展張・要求性能墜落制止用器具の使用等の措置を講じる義務事業者
520条(事業者に対する原則義務は規定していない)518条2項・519条2項の場合に要求性能墜落制止用器具等の使用を命じられたときの使用義務労働者
521条高さ2m以上の箇所で要求性能墜落制止用器具等を使用させる場合、安全に取り付けるための設備等を設ける義務要求性能墜落制止用器具等・取付設備等の異常の有無について随時点検する義務事業者

いずれも安衛則第2編第9章第1節「墜落等による危険の防止」に置かれた条文です。520条は、労働者側の使用義務を定めています。なお、当サイトの公表事案では、法条欄に520条を記載したものはありませんでした。

519条の根拠となる法律の規定は、労働安全衛生法第21条第2項です。

「事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。」

※ 出典:厚生労働省「労働安全衛生法」

当サイトの集計では、519条に関する282件のうち279件で、表記ゆれを含む労働安全衛生法第21条系の記載が併記されていました(残り3件は法20条2件・法31条1件)。

墜落防止義務違反の罰則

安衛法第21条第2項に基づく墜落防止措置義務(具体的な措置を定めるのが安衛則519条)に違反した場合、労働安全衛生法第119条により6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。

「次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。」(第119条本文)

「第十四条、第二十条から第二十五条まで…の規定に違反したとき」(第119条第1号、抜粋)

2025年6月1日施行の刑法等改正により、罰則の呼称は「懲役」から「拘禁刑」に変わっています。

違反行為が会社の代表者や従業員によって行われた場合は、行為者本人だけでなく法人にも同様の罰金刑が科される「両罰規定」(労働安全衛生法第122条)があります。

実際に罰則が科されるかどうか、また科される場合の量刑は、個別の事案ごとに裁判所が判断します。

※ 出典:厚生労働省「労働安全衛生法」(第21条・第119条・第122条)

危険な現場の相談先・申告方法

作業従事者は、労働安全衛生法第97条に基づき、都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官へ申告できます。

  • 第1項:作業従事者は、事業場に法令違反の事実があるときは、都道府県労働局長・労働基準監督署長・労働基準監督官に申告できる
  • 第2項:事業者は、申告をしたことを理由に、労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない
  • 第3項:注文者・機械等貸与者など契約の相手方は、申告をしたことを理由に、個人事業者等に対して取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない

2026年4月施行の改正により、申告できる主体は労働者に加え、一人親方・フリーランス等を含む「作業従事者」に拡大されています。契約の相手方(注文者・機械等貸与者等)による取引停止等の不利益取扱いも禁止されています(第3項)。

※ 出典:厚生労働省「労働安全衛生法」

相談窓口は、勤務先の事業場を管轄する労働基準監督署です。管轄署がわからない場合は、全国労働基準監督署の所在案内(厚生労働省)で確認できます。

安衛則519条に関する公表事案(当サイト分類)

以下は、当サイトが安衛則519条に関係すると判断した公表事案の件数です。原資料の法条表記に誤りがあるとみられる1件も、事案概要を確認したうえで集計に含めました。

なお、公表時点で違反や有罪が確定しているとは限りません。年は事故発生年ではなく、当サイトのデータベースに収録した公表年です。

当サイトの年別収録件数

519条関連の当サイト収録件数 当サイト全体の収録件数(参考)
2017年2件35件
2018年0件16件
2019年4件50件
2020年35件439件
2021年48件586件
2022年40件576件
2023年52件622件
2024年45件725件
2025年38件663件
2026年18件349件

2018年の0件は、当サイトの収録範囲内での数字です。2026年7月29日時点の集計です。

都道府県別件数(2025〜2026年)

都道府県別の件数は、収録条件を比較的そろえやすい2025年と2026年に絞りました。

当サイト掲載件数の合計は56件です。

都道府県 件数 当サイト収録件数に占める割合
北海道1件1.8%
青森県2件3.6%
岩手県0件0.0%
宮城県1件1.8%
秋田県0件0.0%
山形県1件1.8%
福島県1件1.8%
茨城県0件0.0%
栃木県4件7.1%
群馬県1件1.8%
埼玉県1件1.8%
千葉県2件3.6%
東京都3件5.4%
神奈川県1件1.8%
新潟県3件5.4%
富山県3件5.4%
石川県2件3.6%
福井県0件0.0%
山梨県0件0.0%
長野県1件1.8%
岐阜県0件0.0%
静岡県1件1.8%
愛知県1件1.8%
三重県1件1.8%
滋賀県2件3.6%
京都府2件3.6%
大阪府3件5.4%
兵庫県2件3.6%
奈良県0件0.0%
和歌山県1件1.8%
鳥取県1件1.8%
島根県0件0.0%
岡山県3件5.4%
広島県0件0.0%
山口県0件0.0%
徳島県0件0.0%
香川県0件0.0%
愛媛県0件0.0%
高知県1件1.8%
福岡県4件7.1%
佐賀県0件0.0%
長崎県2件3.6%
熊本県1件1.8%
大分県1件1.8%
宮崎県1件1.8%
鹿児島県2件3.6%
沖縄県0件0.0%

2026年7月29日時点の集計です。

参考値:収録累計

2017〜2026年に当サイトが収録した519条関連の事案は、計282件です。ただし、2022年以前は年や都道府県によって収録範囲が限られるため、期間をそろえた比較には向きません。

集計方法と収録範囲

法条欄に労働安全衛生規則第519条系の表記がある281件に加え、原資料で「労働安全衛生法第519条」と記載され、事案概要から労働安全衛生規則第519条に関する事案と判断した1件を含め、合計282件を集計対象としています。同一レコードに同じ法条が複数登録されていても1件として集計しています。

当サイトのデータは、各都道府県労働局と厚生労働省の公表資料をもとに収集しています。公表期間や収集状況、労働局の公表方針は、地域や年によって異なります。そのため、掲載件数だけで地域差や年ごとの増減を判断することはできません。また、公表された全事案を収録しているわけではありません。

一次情報・最終確認日

条文は法改正により変更される場合があるため、最新の内容は必ず上記の一次情報でご確認ください。

法令・制度の最終確認日:2026年7月29日

墜落・転落災害の統計と行政の対応

厚生労働省の「令和7年の労働災害発生状況」(確定値)では、死亡災害のうち「墜落・転落」が186人で最も多くなっています。次いで「交通事故(道路)」126人、「はさまれ・巻き込まれ」117人です。なお、建設業全体の死亡者数は214人です。

※ 出典:厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」

厚生労働省や労働局は、現場のパトロールや立入検査のほか、悪質な事案の送検、元請事業者への指導などを行っています。

※ 出典:厚生労働省「足場からの総合的な墜落・転落災害防止対策について」

よくある質問

高さ何メートルから囲い等の設置義務がある?

高さ2メートル以上の作業床の端や開口部等で、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所が対象です。

519条が適用されない場面では、墜落防止の対策をしなくていい?

いいえ。2メートル未満でも、安全対策が不要になるわけではありません。作業方法・設備によっては、519条とは別の規定が適用されます。脚立・はしご・足場そのものについては、それぞれ安衛則第528条(脚立)・第527条(移動はしご)・第563条(足場の作業床)などの規定が適用されます。

安全帯(要求性能墜落制止用器具)を使えば囲い等は不要?

いいえ。安全帯は、囲い等の設置が著しく困難な場合や、作業のため一時的に取り外す場合に使う代替措置です。原則は囲い等の設置です。

墜落防止義務違反の罰則は?

安衛法21条2項に基づく墜落防止措置義務(安衛則519条が具体的な内容を定める)に違反した場合、労働安全衛生法第119条により、6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。

現場で墜落防止措置が不十分なときはどこへ相談する?

労働安全衛生法第97条に基づき、勤務先の事業場を管轄する労働基準監督署に申告できます。申告を理由とした不利益な取扱いは禁止されています。

公表されている企業は必ず違反が確定した企業か?

いいえ。書類送検等が行われた事案のうち一定の基準に該当するものが公表されており、その後の起訴・有罪の有無とは別です。

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