最低賃金違反の罰則とは?最低賃金法第4条をわかりやすく解説

最低賃金より低い賃金しか支払われていない場合、違法になるのか、罰則はあるのか。このページでは最低賃金法第4条の内容と罰則、当サイトが収録している公表事案からわかる傾向を解説します。

もくじ

最低賃金未満の支払いは原則として違法

使用者が労働者に最低賃金(地域別最低賃金)を下回る賃金しか支払わない場合、原則として最低賃金法違反となります。このルールはパート・アルバイト・契約社員・正社員など雇用形態を問わず適用されます。

ただし、最低賃金法には、都道府県労働局長の許可を受けた場合に最低賃金額を減額できる「最低賃金の減額の特例」が定められています。試用期間中の労働者や、精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者などが対象であり、許可を得ていない一方的な減額は認められません。

自分の賃金が最低賃金を下回っていないか確認したい場合は、まず都道府県別の最低賃金額一覧で勤務先の都道府県の最低賃金額を確認してください。

最低賃金法第4条とは

条文が定める内容

最低賃金法第4条は、使用者が労働者に支払う賃金についての最も基本的なルールを定めています。

第1項では「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」と定められており、最低賃金以上の賃金を支払うことは使用者の義務です。

さらに第2項では、最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約はその部分が無効となり、無効となった部分は最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。つまり、最低賃金より低い時給で契約していたとしても、その部分は最低賃金額の定めがあったものとして扱われます。

なお第3項・第4項では、賃金に算入しない手当の取り扱いや、労働者の都合で労働しなかった時間に対応する賃金を支払わなくてもよい旨が定められています。

適用される労働者・除外されるケース

最低賃金法第4条は、パート・アルバイト・契約社員・正社員など雇用形態を問わず、原則としてすべての労働者に適用されます。

最低賃金法第7条では、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、次のような労働者について最低賃金額を減額できる特例(最低賃金の減額の特例)が定められています。

  • 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
  • 試の使用期間中の者(いわゆる試用期間中の労働者)
  • 職業能力開発促進法に基づく認定を受けた基礎的技能習得訓練の受講者
  • 軽易な業務に従事する者など

いずれも都道府県労働局長の許可を受けていることが前提であり、使用者が独自に判断して減額することは認められません。業種によっては、地域別最低賃金より高い「特定最低賃金」が適用される場合があります。

※ 条文の引用はe-Gov法令検索「最低賃金法」(2026年6月25日確認)に基づいています。最新の条文は必ず一次情報でご確認ください。

最低賃金法第4条に違反した場合の罰則

罰則の内容

最低賃金法第40条は、第4条第1項(最低賃金以上の賃金を支払う義務)に違反した場合の罰則を次のように定めています。

第四条第一項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、五十万円以下の罰金に処する。

地域別最低賃金(都道府県ごとに定められる最低賃金)に違反して賃金を支払わなかった使用者には、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

また第42条では、違反行為が会社(法人)の代表者や従業員などによって行われた場合、行為者本人だけでなく法人自体にも同様の罰金刑を科す「両罰規定」が定められています。

なお、業種別に定められる「特定最低賃金」(船員を除く)に対する違反は、この第40条の罰則の対象外です。特定最低賃金の効力や取り扱いは地域別最低賃金とは異なります。

実際に罰則が科されるかどうか、また科される場合の量刑は、個別の事案ごとに裁判所が判断します。このページの説明は、条文上の一般的な内容を紹介するものです。

労働者側の相談窓口

最低賃金法第34条第1項では、労働者が「事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるとき」に、都道府県労働局長・労働基準監督署長・労働基準監督官に申告して是正を求めることができると定められています。自分の賃金が最低賃金を下回っていると感じた場合は、勤務先を管轄する労働基準監督署や都道府県労働局に相談・申告できます。

同条第2項では、申告したことを理由に使用者が労働者に解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止しており、これに違反した使用者には第39条により6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金が科されます。

※ 罰則に関する条文の引用も同様にe-Gov法令検索「最低賃金法」(2026年6月25日確認)に基づいています。

「公表事案」と「違反・有罪の確定」は別

当サイトが掲載している事案は、労働局が公表した「最低賃金法第4条に関する公表事案」です。これは裁判で違反・有罪が確定したことを意味するものではありません。

労働局・労働基準監督署は、最低賃金法をはじめとする労働関係法令への違反の疑いがあるとして書類送検等が行われた事案のうち、一定の基準に該当するものを公表する運用を行っています。公表される時点ではまだ送致段階であり、その後検察官が起訴するかどうか、裁判所が有罪と判断するかどうかは別の手続きです。

そのため当サイトでは、公表事案について「違反企業」のような断定的な表現を避け、「最低賃金法第4条に関する公表事案」「労働局が公表した事案」のように表記しています。掲載件数も「当サイト収録データ上の件数」であり、実際の違反発生率や有罪率を示すものではありません。

公表事案の詳細(社名・公表日・該当する法条など)は、公表事案の全データ一覧で検索・閲覧できます。

当サイト収録データで見る都道府県別の傾向

当サイト収録データにおける都道府県別件数

直近の傾向を見るため、2025年〜2026年に公表された「最低賃金法第4条に関する公表事案」を集計しました。全国合計は191件です(1事案で同じ法条が複数回引用されている場合も1件として数えています)。都道府県別の件数は次の通りです。

都道府県 件数 全国に占める割合
北海道4件2.1%
青森県1件0.5%
岩手県3件1.6%
宮城県1件0.5%
秋田県0件0.0%
山形県3件1.6%
福島県6件3.1%
茨城県5件2.6%
栃木県3件1.6%
群馬県9件4.7%
埼玉県3件1.6%
千葉県0件0.0%
東京都1件0.5%
神奈川県5件2.6%
新潟県2件1.0%
富山県1件0.5%
石川県4件2.1%
福井県0件0.0%
山梨県1件0.5%
長野県7件3.7%
岐阜県12件6.3%
静岡県3件1.6%
愛知県22件11.5%
三重県4件2.1%
滋賀県3件1.6%
京都府3件1.6%
大阪府6件3.1%
兵庫県12件6.3%
奈良県5件2.6%
和歌山県1件0.5%
鳥取県5件2.6%
島根県1件0.5%
岡山県7件3.7%
広島県7件3.7%
山口県3件1.6%
徳島県1件0.5%
香川県1件0.5%
愛媛県6件3.1%
高知県3件1.6%
福岡県13件6.8%
佐賀県1件0.5%
長崎県6件3.1%
熊本県1件0.5%
大分県2件1.0%
宮崎県2件1.0%
鹿児島県1件0.5%
沖縄県1件0.5%

件数の見方に関する注意

件数は、労働局の公表方針・当サイトの収録範囲・都道府県内の事業所数や労働者数の違いなど、複数の要因に影響されます。そのため、件数の多さがそのまま「違反の多い県」を意味するわけではありません(当サイトの収録範囲については後述の「データの見方・出典」をご覧ください)。

公表事案の年次傾向

年別件数の推移

当サイトが収録している「最低賃金法第4条に関する公表事案」を、2023年から2026年まで年別に集計しました(2023年より前は当サイトの収録範囲が限られているため対象から除いています)。ここでの件数は「その年に公表された件数」であり、違反が実際に発生した年や、罰則が確定した年とは必ずしも一致しません。

公表件数
2023年122件
2024年121件
2025年120件
2026年71件

2026年は集計時点(2026年6月25日)でまだ年の途中であるため、件数は今後さらに増える可能性があります。年ごとの件数の増減は、労働局の公表方針や当サイトの収録状況の影響も受けるため、その時期に違反そのものが急増・急減したと断定するものではありません。

最低賃金額の推移と並べて見る際の注意

都道府県別の最低賃金額の推移と、上記の公表事案件数の推移を並べて見る場合も、当サイトのデータだけでは両者の相関や因果関係を判断することはできません。最低賃金額が上がったために公表事案が増えた、あるいは減ったといった結論は導けません。

データの見方・出典

収録範囲

当サイトのデータは、各都道府県労働局・厚生労働省が公表した資料をもとに収集しています。公表期間や都道府県によって、収集できた資料の範囲が異なる場合があります。

このページおよび関連ページに掲載している件数は、いずれも当サイトに収録できた範囲内での集計であり、実際に公表された全件を網羅している保証はありません。

一次情報・最終確認日

本ページで引用している最低賃金法の条文は、次の一次情報に基づいています。

条文は法改正により変更される場合があるため、最新の内容は必ず上記の一次情報でご確認ください。

関連ページ

よくある質問

最低賃金未満で働かせるとどうなる?

最低賃金法第4条により、使用者は労働者に最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。最低賃金未満の賃金を定めた労働契約はその部分が無効となり、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。違反した場合は第40条により50万円以下の罰金が科される可能性があります。

試用期間中・研修期間中は最低賃金より低くてもいい?

原則として、試用期間中・研修期間中も最低賃金以上の支払いが必要です。最低賃金法上「研修期間」という特別な区分はなく、名称が違っても原則のルールがそのまま適用されます。

最低賃金法第7条に基づき、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、試の使用期間中の労働者(いわゆる試用期間中の労働者)について最低賃金額を減額できる特例がありますが、使用者が独自に「試用期間だから」「研修中だから」といった理由で一方的に減額することは認められません。

パート・アルバイトにも最低賃金は適用される?

はい。最低賃金法第4条は、パート・アルバイト・契約社員・正社員など雇用形態を問わず、原則としてすべての労働者に適用されます。雇用形態を理由に最低賃金未満で働かせることはできません。

公表されている企業は必ず違反が確定した企業か?

いいえ。労働局が公表する事案は、書類送検等の手続きを行った事案のうち一定の基準に該当するものであり、その後検察官が起訴するかどうか、裁判所が有罪と判断するかどうかは別の手続きです。当サイトでも「違反企業」のような断定的な表現は避け、「最低賃金法第4条に関する公表事案」と表記しています。

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